An Expression

Summary

《An Expression》は、土佐尚子の初期ビデオアートにおいて、映像・音・身体の関係を根底から組み替えた作品である。 本作では、顔の表情を収集したイメージを時間軸上に配置し、その明暗の変化を光センサーによって読み取り、リアルタイムで音へと変換するシステムが構築されている。 ここで重要なのは、映像が音楽に付随するものでも、音が映像を補完するものでもない点である。 両者は因果的に結びつき、映像の変化がそのまま音となり、音が再び映像の知覚を変化させる。つまりこの作品は、視覚と聴覚の関係を表現するのではなく、その関係が生成される仕組みそのものを提示している。 さらに、本作は「表情」というテーマを扱いながら、感情を表現してはいない。 個々の顔は意味や物語を担うのではなく、単なる光の分布として扱われ、その変化が音へと変換される。ここでは、感情は読み取られる対象ではなく、システムの中で立ち現れる現象となる。 この点において、《An Expression》は、後年の《Sound of Ikebana》における「生成」の思想をすでに内包している。 《Sound of Ikebana》では、音が流体に作用し形が生まれるが、本作では、光と時間の変化が音となり、感覚そのものが立ち上がる。 つまり《An Expression》は、映像作品ではない。 それは、視覚・聴覚・身体のあいだにある不可視の関係が、時間とともに露出していく過程である。 土佐の作品が後に「自然が生まれる瞬間」を扱うとすれば、この作品はその出発点として、 感情や身体の内側にある関係が、知覚として生成される瞬間を扱っている。

音楽 近藤 達郎


 ニューヨーク近代美術館の企画展で発表した作品。光センサーを用いて映像の明度とシンクロさせて、様々な顔の表情のサンプリング映像の明度から音楽を自動生成した作品。ヴィジュアルなイメージの構築ではなく、次第にシステム自体が露出する。映像の明度をが下がると高音が生成され明度を上げると、低音が生成される構造を持つ。音源は、5種類用意し、ローランドのSYSTEM 100というアナログシンセサイザーでコントロールしている。映像の移り変わりが激しいので、音楽はラジカルな生き物のように仕上がった。


Reference

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Exhibition

時間1986年
場所ニューヨーク近代美術館
内容NEW VIDEO JAPAN

Collection

作家蔵
名古屋市美術館
MoMA (The Museum of Modern Art)